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EUに必要なのは「壁を作る」ことではなく、技術と協力の「橋を架ける」こと
2025-03-23


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【概要】 
 
 多くのEU加盟国が中国の通信機器メーカー、HuaweiやZTEを5Gネットワークから排除することに消極的である理由にはいくつかの要因がある。

 まず、EU加盟国の中で17か国が、EU委員会の「5Gツールボックス」に従って中国の企業を排除する措置を完全には実施していないことが報告されている。具体的には、14か国が「高リスク供給者」とされる中国の企業に対して、何らかの制限を課していない。これにより、EU内部で、外部からの圧力や安全性に関する警告にもかかわらず、中国との5G協力を続ける理由について再考が促されるべきだという指摘がなされている。

 中国の5G技術を排除しない理由の一つとして、欧州諸国が5Gの建設において中国製の機器を使うことにより、コスト削減や実務的な便益を得ていることが挙げられる。例えば、欧州の通信業界は中国の技術が提供する低コストで高効率なソリューションを活用しており、これを排除することで建設コストが大幅に上昇し、その負担を誰が引き受けるかという問題が生じる。また、中国の技術を撤去しても、それに見合う実際的な利益や補償が得られないことも、排除に消極的な理由となっている。

 EUは2020年にHuaweiなどの「高リスク供給者」を排除するか制限することを推奨したが、その後5年が経過しても、EUの5Gネットワークは他地域に比べて遅れを取っている。例えば、2024年末にはEU内のモバイル接続の約30%が5Gに移行する予定だが、これは北米の60%や東アジアの50%以上の割合と比べて遅れを取っている。さらに、2024年末には中国は410万基以上の5G基地局を設置しているのに対し、EUの27カ国は合計で46万基にとどまっている。これにより、EUは5G技術において世界的に遅れを取っていると指摘されている。

 また、EU内で5G技術の「リスク軽減」を進めるため、欧州議会はEU法として5Gのサイバーセキュリティ対策を義務化することを検討している。しかし、現時点では、中国企業の機器がセキュリティ上の脅威を引き起こす証拠はない。むしろ、無根拠な不安から中国の技術を排除することは、EU自体の強みを損なう結果になりかねない。

 欧州が直面している課題は、競争相手との対立ではなく、協力によって解決すべきである。中国のHuaweiやZTEは、数十年にわたり欧州で運用されており、欧州の通信セクターの成長に貢献し、かなりの社会経済的利益を生み出している。中国は5G技術において競争力を持ち、これがEUがデジタル化の停滞を克服するために重要な役割を果たす可能性がある。

 これまでの中国とEUの協力は、東洋の知恵と欧州の経験が融合することで革新的な解決策が生まれることを示している。EUは「リスク軽減」の迷路に迷い込むのではなく、疑念の壁を取り払うべきである。5G技術はゼロサムゲームではなく、協力の場であるべきだという視点が必要である。

【詳細】 
 
 EU加盟国が中国の通信機器メーカー、特にHuaweiやZTEを5Gネットワークから排除することに消極的な理由は、複数の要因が絡み合っている。

 1. コストと実務的な影響

 多くの欧州諸国が中国製の通信機器を使用している理由の一つは、コスト面での利点である。中国企業が提供する5G技術は、非常に競争力があり、安価であるため、欧州諸国が迅速に5Gインフラを展開する際に重要な役割を果たしてきた。特に、HuaweiやZTEは高品質の通信機器を低コストで提供しており、そのおかげで、欧州諸国は5Gの構築を進めることができた。

 もし中国企業の機器を排除するとなると、代替として使用する機器の価格は高騰する可能性が高く、これにより通信インフラの整備費用が大幅に増加することになる。実際、欧州では予算の限られた中で通信インフラを構築する必要があり、このようなコストの上昇は政治的な問題にもなる。また、既に中国製の機器が設置されている場合、その撤去にも巨額の費用がかかるが、それに見合う具体的な利益は得られないため、撤去の決断が難しくなる。

 2. 5Gの展開における遅れ


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