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【概要】
2024年11月25日のアジア・タイムズの記事において、ガブリエル・ホンラダ氏は、ロシアがウクライナに対して「オレシニク」と呼ばれる中距離弾道ミサイル(IRBM)を使用し、多弾頭再突入体(MIRV)を搭載して攻撃を行ったことが、重大なエスカレーションを意味すると指摘している。この攻撃はNATOとの対立における核の曖昧性を強調し、誤算のリスクを高めるものとされる。
攻撃の詳細
報道によれば、ロシアはドニプロのピウデンマシュ工業団地を標的としてミサイル攻撃を実施した。この施設はウクライナ軍向けのミサイルやその他の機械を製造している。攻撃後、ウクライナ空軍(UAF)は、発射されたのはアストラハン地域から発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)であると主張したが、米国および西側当局はこれを中距離弾道ミサイル(IRBM)であると訂正した。
「The War Zone」の報告では、このミサイルはロシアの「RS-26ルベジ」を改良した「オレシニク」として特定されている。このミサイルは2008年に開発が開始され、固体燃料式で車両移動可能なシステムとして設計されており、旧中距離核戦力(INF)条約の制約内での運用が想定されていた。射程は3,000〜5,500kmとされる。
技術的な課題とリスク
従来型のMIRV搭載IRBMまたはICBMの使用には多くの技術的課題が伴う。精度が重要であり、高度な誘導・目標設定技術が必要である。また、高価なミサイルを核兵器以外の目的で使用することの費用対効果も問題視されている。さらに、発射されたミサイルが核兵器を搭載しているか従来型の兵器であるかを即座に判別することが困難であるため、「警告発射」による誤認や予期せぬエスカレーションのリスクもある。
ロシアの「オレシニク」ミサイルは「ホットスワップ可能」な弾頭セクションを備えている可能性があり、従来型弾頭と核弾頭を簡単に切り替えられる設計とされる。このような核の曖昧性はロシアの抑止戦略の中核であり、西側諸国の対応を制約してきた。将来の攻撃が核弾頭を伴う可能性があるという懸念が高まる。
ロシアの戦略的意図と新たな核戦略
ロシアの核戦略は、曖昧性を活用することにより、敵対国の対応を混乱させる目的がある。例えば、カリブル巡航ミサイル、イスカンデル短距離弾道ミサイル(SRBM)、Kh-101空中発射型ミサイルなどの二重用途システムを多用しており、これにより核と従来型の区別が困難になる。
また、ロシアは2024年版の新たな核戦略で核兵器使用の条件を広げたとされる。新しいドクトリンでは「排他的に」という表現が削除され、主権や領土の一体性への脅威が核使用の正当化条件として明記されている。また、ロシアおよびベラルーシ軍が海外で作戦を行う場合の核攻撃シナリオや、大規模な空中・宇宙攻撃システムの発射が確認された場合も含まれている。
これにより、ロシアが核使用のハードルを下げている可能性が示唆されるが、同時に、これがプロパガンダ的な要素を持つ可能性もあると指摘されている。この戦略は、敵対国に対する警告として機能しつつ、ロシアの地政学的立場を強化する意図があると見られる。
【詳細】
ロシアの「オレシニク(Oreshnik)」中距離弾道ミサイル(IRBM)による攻撃は、現在のウクライナ戦争における技術的、戦略的、地政学的要素が絡み合う複雑な状況を明らかにする。この攻撃は、ミサイル技術、ロシアの核戦略、そして西側諸国との緊張関係において重要な示唆を含むため、以下にさらに詳述する。
1. オレシニク(Oreshnik)ミサイルの技術的特徴
「オレシニク」は、ロシアの「RS-26ルベジ」ミサイルの派生型とされる。RS-26は、固体燃料を使用し、車両で移動可能な中距離弾道ミサイルである。この特徴は、ミサイルの迅速な展開と隠密性を可能にし、発射地点の特定や防御を困難にする。以下に「オレシニク」の具体的な技術的ポイントを挙げる。