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ロシアのガス供給:カザフスタンを経由して中国に
2024-11-28


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【概要】
  
 カザフスタンを経由して中国にロシアのガスを供給するパイプライン建設の可能性について分析している。この構想は、モンゴルを経由する計画(シベリアの力II)と比較した場合の代替案または補完案として提示されているが、その背景には政治的な要因がある。

 ロシアのアレクサンドル・ノヴァク副首相(エネルギー担当)は11月中旬、カザフスタン経由の新ルートの可能性について中国と検討していると述べた。このパイプラインの想定供給能力は年間約350億立方メートルであり、これは「シベリアの力I」の最大能力(年間380億立方メートル)に近いが、「シベリアの力II」が提案する500億立方メートルには及ばない。

 「シベリアの力II」については、ロシアと中国の価格交渉が進展せず、プーチン大統領が2024年5月の訪中時にこのプロジェクトに関する合意を見送ったと分析されている。報道によれば、中国は大幅な値引きを求めており、ロシアはそれを受け入れたくない状況にある。この価格交渉の難航が、ロシアと中国間の新たなパイプライン計画の実現性を左右している。

 カザフスタン経由案が浮上した理由は、主に政治的側面にある。カザフスタンは2022年以降、西側諸国からの圧力を受けており、その信頼性についてロシアは懸念を抱いている。一方で、中国とのガス価格交渉で妥協し、中国が求める価格を受け入れることで、カザフスタンがロシアの影響圏から外れ、西側に接近することを防ぐ効果も期待される。

 この妥協が成立するかは、ウクライナ紛争の進展や西側諸国のカザフスタンに対する圧力が今後どう変化するかによる。たとえば、ウクライナ紛争が停戦に至り、西側の圧力が弱まれば、ロシアがカザフスタンに対する政治的譲歩の必要性を感じなくなる可能性がある。その場合、中国との価格交渉で強硬な姿勢を取り続け、「シベリアの力II」計画の進展を模索することになるだろう。

 結論として、カザフスタン経由のガスパイプライン計画は、現時点では予備的な提案に過ぎない。この案は、ウクライナ紛争が長期化し、西側諸国がカザフスタンへの圧力を強める状況に備えたバックアッププランとしての意味合いが強い。一方で、この計画が進展すれば、ロシアにとってはカザフスタンの地政学的安定性を確保しつつ、中国へのガス供給を通じて予算収入を増加させる可能性がある。

【詳細】

 カザフスタンを経由して中国にロシアのガスを供給する新たなパイプライン計画について、より詳しく説明する。

 背景と現状

 ロシアと中国のエネルギー協力は、特に西側諸国がロシアのエネルギー輸出を制限する制裁を強化した後、戦略的に重要性を増している。既存の「シベリアの力I」パイプラインは、年間380億立方メートルのガスを供給可能であるが、それを超える新たな供給ルートの構築が議論されている。「シベリアの力II」は、モンゴルを経由して中国へ年間500億立方メートルを供給することを目的とした計画であるが、ロシアと中国の間で価格交渉が難航しているため、未だ正式な合意には至っていない。

 その代替案として、カザフスタンを経由するパイプライン計画が浮上している。この新計画は、ロシア側がカザフスタンを通じたルートを模索し始めたことを示しており、これはエネルギー戦略だけでなく、地政学的戦略にも関係している。

 カザフスタン経由案の詳細

 ロシアのエネルギー相であるアレクサンドル・ノヴァクが発言したように、この新計画の供給能力は年間350億立方メートルとされる。これは「シベリアの力I」に匹敵する能力であるが、「シベリアの力II」の提案能力である500億立方メートルよりは低い。

 なぜカザフスタンが注目されるのか?

 1.政治的背景

 ・ロシアはカザフスタンを、単なるエネルギー輸送の通過国としてだけでなく、戦略的に重要な地政学的パートナーと見なしている。

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