https://www.asahi-net.or.jp/~np9i-adc/

ブタの腎臓をマカク(オナガザル)に移植
2024-11-30


禺画像]
【概要】

 中国の武漢にある華中科技大学附属同済病院の臓器移植研究チームは、遺伝子編集されたブタの腎臓をマカク(オナガザル)に移植し、184日間の生存を実現するという大きな成果を達成した。この成果は、11月に実現されたもので、中国における異種移植(異種臓器移植)研究が国際的な先進レベルに近づいたことを示しており、将来の臨床研究に向けた堅実な基盤を築いたと、同病院は発表している。

 遺伝子編集されたブタを利用して人間に臓器を提供する異種移植は、先端バイオテクノロジーにおける重要な研究領域である。中国の臓器移植における臨床応用技術は国際基準に匹敵しており、遺伝子編集ブタの研究開発能力も国際水準に近づいているとされる。

 一方で、遺伝子編集ブタの腎臓を非ヒト霊長類であるマカクに移植する試みでは、長期的な生存を達成することが課題となっており、これが中国で異種腎移植を臨床試験に進める上での主な障壁となっていると述べられている。

 研究チームのリーダーである陳剛(Chen Gang)氏によれば、異種移植の動物実験において、180日間の生存は長期生存の基準と見なされている。国際的には、約20件のケースで遺伝子編集ブタの腎臓移植における長期生存が報告されており、アメリカでは尿毒症患者を対象とした臨床試験も先行して行われている。

 中国が同様の臨床研究を開始するためには、動物実験における長期生存の達成が不可欠であると陳氏は強調している。陳氏のチームは、異種移植研究に約20年を費やし、特に過去5年間で遺伝子編集された新型ブタからマカクへの腎臓移植に関する20件以上の動物実験を実施してきた。

 2024年5月10日、動物実験の倫理承認を得た後、GTKO/β4GalNT2KO/hCD55/hTBMの4遺伝子を編集したpCMV陰性ブタをドナーとして使用し、マカクに単一のブタの腎臓を移植した。同時にマカクの両側腎臓を摘出した。この移植では免疫抑制療法を改善し、移植腎臓の生存期間が184日に達した。

 移植後の5か月間、マカクの移植腎臓は完全に正常に機能し、さまざまな生理指標も概ね正常範囲内に収まっていた。しかし、時間の経過とともに蛋白尿が悪化し、異種抗体による慢性拒絶反応が見られた。この結果を受け、陳氏は抗体産生の抑制策を強化し、さらなる生存期間の改善に取り組むことで、臨床研究に向けた基盤を整えると述べている。

【詳細】

 中国の武漢にある華中科技大学附属同済病院の研究チームは、遺伝子編集されたブタの腎臓をマカク(オナガザル)に移植し、これまでにない長期間の生存を達成した。この研究成果は2024年11月に発表され、184日間にわたって移植されたブタの腎臓がマカクで機能したことが確認された。この結果は、中国における異種移植(遺伝子編集された動物の臓器を用いる移植)の研究が、国際的な先端技術に迫る進展を見せていることを示している。

 1. 研究の背景と目的

 異種移植は、ヒトの臓器不足を解決するための重要な手段と見なされており、遺伝子編集技術を利用して動物からヒトへの臓器提供を目指す研究が世界中で進められている。特に、ブタはヒトに近い臓器を持つため、遺伝子編集を施したブタから臓器を取り出し、それをヒトに移植する方法が注目されている。ブタの腎臓は人間の腎臓に似ており、免疫反応を克服できれば臓器提供の新しい方法となると期待されている。

 2. 遺伝子編集の技術

 研究チームは、遺伝子編集によってブタの遺伝子を改変し、ヒトの免疫系による拒絶反応を減少させることを目指した。使用された遺伝子編集技術は、GTKO(ガラクトース転送酵素欠損)、β4GalNT2KO(β4-ガラクトシルトランスフェラーゼ欠損)、hCD55(ヒトCD55遺伝子)、hTBM(ヒト腎臓基底膜遺伝子)など、複数の遺伝子をターゲットにしたものだ。これにより、ブタの臓器がヒトの免疫系に対して耐性を持つようになり、拒絶反応を抑えることが可能になるとされている。

 3. 実験の概要


続きを読む


コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット