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ロシア:新たなシリア政権との協力を探る
2024-12-11


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【概要】

 ロシアが資金提供するメディアのシリアの政権交代に関する報道は、従来の予想を覆すものとなっている。これらのメディアは以前、シリアの政権交代が未曽有のテロリスト危機を引き起こす可能性があると警告していたが、現在では落ち着いた態度を示している。この変化は、ロシアがシリアでの影響力を維持するために状況を慎重に見極めようとしていることを示唆している。

 RTは、シリア・アラブ軍(SAA)の崩壊とバッシャール・アル=アサド大統領のダマスカスからの逃亡に関連する興味深い2つの意見記事を掲載した。1つ目の記事はモスクワの高等経済学院の講師であるムラッド・サディグザデ氏によるもので、「なぜシリアは急速に崩壊したのか、そして次に何が起きるのか?」という問いに答えている。彼は外国の干渉に触れた後、シリア国内の問題に焦点を当てた。特に、アサド政権が軍事的解決策に依存し、国内外での政治的対話を無視したことが戦略的な失敗であったと指摘している。

 2つ目の記事は、Gazeta.ruの政治アナリストであるヴィタリー・リュムシン氏の記事を転載したもので、「アサドの崩壊は予想されていたが、誰も見て見ぬふりをしていた」という内容である。彼は、シリアが人道的および経済的危機に直面し、住民の90%が貧困に苦しむ中で、アサド政権が腐敗し、効果的な解決策を提供できなかったと述べている。また、軍の士気低下や国際的な支援の不足も、アサド政権の崩壊を早めた要因として挙げている。

 さらに注目すべき点として、RTやTASSが「政権」という言葉を使用し始めたことが挙げられる。この用語の使用はこれまで避けられていたが、現在ではアサド政権を「腐敗した体制」として批判的に描写している。また、HTS(ハヤート・タハリール・アル=シャム)の指導者を「武装反対派指導者」と表現し、従来のテロリストとしての評価を抑えた報道を行っている。

 TASSは、シリアの新たな旗の下で大使館が通常通り運営されていることを報じ、新政権の代表者を公式な外交使節として認めていることを示唆している。これには、ロシアがシリアにおける軍事拠点を維持しつつ、新たなシリア軍の再編に協力する可能性が影響しているとみられる。

 これらの報道から、ロシア政府がシリアにおける最悪のシナリオを回避し、外交的解決を模索する方針を示唆していることが明らかである。この方針は、ロシアが影響力を維持しながら、新たなシリア政権との協力を探るための慎重な対応といえる。

【詳細】

 ロシアが資金提供するメディアのシリアの政権交代に関する報道内容とその背景について、以下にさらに詳しく説明する。

 1. 背景と文脈

 シリアにおけるバッシャール・アル=アサド政権は、内戦を通じて10年以上にわたり権力を維持してきた。しかし、2024年に入ると、政権は急激に崩壊した。これには、国内外の要因が複合的に作用しており、以下のポイントが挙げられる。

 ・国内要因: 長年の内戦により、シリア経済は壊滅的な打撃を受け、国民の90%が貧困状態に陥り、電力不足や食料価格の高騰が深刻化した。これにより、政府に対する支持が大幅に低下した。

 ・国際要因: 米国とクルド勢力による油田支配、西側諸国の制裁、イランの影響力低下、そしてロシアの支援の限界などが、政権をさらに追い詰めた。

 2. ロシアメディアの報道姿勢の変化

 ロシアが資金提供するメディア(RTやTASSなど)は、これまでアサド政権を一貫して支持してきたが、政権崩壊後の報道には顕著な変化が見られる。この変化は、以下の特徴を持つ。

 ・アサド政権への批判

  〓 RTは、モスクワの中東研究センター長であるムラッド・サディグザデ氏の寄稿記事を掲載し、アサド政権が政治的対話を怠り、軍事的解決に依存した戦略的失敗を指摘した。


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