https://www.asahi-net.or.jp/~np9i-adc/

マルコス・ジュニア:ドゥテルテ派との対立で
2025-01-07


禺画像]
【概要】 
 
 フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、国家安全保障会議(NSC)から親中派とされるドゥテルテ親子を含む主要メンバーを排除する行政命令(EO)を2024年末に発令した。これにより、副大統領のサラ・ドゥテルテ氏と前大統領のロドリゴ・ドゥテルテ氏がNSCから外され、同時にドゥテルテ派の政治家たちも同様の処分を受けた。マルコス政権は、この措置を「国家安全保障と主権の保護」を強調しつつ、国内外の新たな課題に対応するための必要性を理由に挙げた。

 加えて、マルコス政権はNSCに議会代表の割合を増加させた。議会の指導者はマルコス大統領の従兄弟で側近のマーティン・ロムアルデス下院議長である。この改編は、ドゥテルテ親子とマルコス大統領の間で長年続いている対立が背景にある。特に、サラ・ドゥテルテ副大統領は自身が暗殺された場合の報復として現大統領の命を狙う可能性を示唆する発言を行い、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領はクーデターを煽るような発言を行った。

 今回の改編は、トランプ次期政権がフィリピンをアメリカと中国の「新冷戦」における前線の同盟国として活用する可能性がある中で行われた。特に、トランプ政権の政策立案者たちは、フィリピンの地政学的重要性を強調しており、マルコス政権がアメリカの地域戦略において中心的な役割を果たすことを期待している。これにより、フィリピン国内の親中派の影響力を排除することが急務とされた。

 ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領は、自身と娘がNSCに関与することを求める手紙を送るなど、マルコス政権に圧力をかけ続けてきたが、今回の排除によりその影響力が大幅に削減された。一方で、ドゥテルテ親子はマルコス政権に対抗する動きを活発化させており、反マルコスの抗議活動を組織したり、革命政府の設立を提唱する動きが一部で見られている。これらの動きは、フィリピン国内の政治的緊張を一層高めている。

 アメリカと中国の競争が激化する中で、マルコス政権はフィリピンを中国の影響力から守るための戦略的決定を行っている。特に、フィリピン北部におけるアメリカの軍事基地拡大を承認するなど、台湾情勢への対応において重要な役割を果たすことが期待されている。専門家たちは、中国がフィリピンの政治的・経済的中立化を目指して介入を強化する可能性を指摘しているが、マルコス政権はそのような動きを防ぐための準備を進めている。

【詳細】

 フィリピンのフェルディナンド・マルコスJr大統領が、国家安全保障会議(NSC)からロドリゴ・ドゥテルテ元大統領とサラ・ドゥテルテ副大統領を含む親中派の主要人物を排除した経緯とその背景が詳述されている。この動きは、アメリカでのドナルド・トランプ次期大統領の就任を前に、フィリピンの安全保障政策を調整し、対中戦略を再構築する意図があると分析されている。

 主なポイント

 1. 国家安全保障会議(NSC)の再編

 マルコス大統領は2024年末に発行した行政命令で、NSCからサラ・ドゥテルテ副大統領とロドリゴ・ドゥテルテ元大統領を排除した。さらに、NSCにおける議会の役割を強化し、下院議長である従兄弟のマーティン・ロムアルデスを中心とした構成に変更した。
行政命令の目的として「国家安全保障と主権を守ること」が強調されており、特に外部からの干渉を排除する姿勢が明示されている。

 2. マルコス政権とドゥテルテ派の対立

 サラ・ドゥテルテ副大統領は暗殺未遂を仮定した発言でマルコス大統領を非難し、父親のロドリゴ・ドゥテルテ元大統領はマルコス政権へのクーデターを煽るような発言を繰り返している。
サラ副大統領は2024年に教育相の職も失い、現時点で全ての重要な意思決定機関から排除されている。さらに、議会での弾劾訴追や父親の「麻薬戦争」を巡る捜査が進行しており、ドゥテルテ派は政治的危機に直面している。

 3. アメリカとの関係と対中戦略


続きを読む


コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット