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ポーランドがウクライナへの平和維持部隊の派遣を拒否
2025-02-20


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【概要】

 ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、ウクライナへの平和維持部隊の派遣を行わないとの立場を改めて表明した。これは、アメリカの国防長官ピート・ヘグセスが、NATO加盟国がウクライナに軍隊を派遣した場合、アメリカはNATOの集団的自衛権(北大西洋条約第5条)を適用しないと発言したことを受けたものである。ポーランドのワディスワフ・コシニアク=カミシュ国防相も、ウクライナへのポーランド軍派遣がロシアとの緊張を高める可能性があると指摘した。このような発言はこれまでポーランド政府から公にはなされていなかった。

 ポーランド政府のこの方針転換は、5月の大統領選挙を控えた政治的な計算によるものと考えられる。現在のリベラル派の政権は、退任予定の保守派の大統領に代わり、自らの路線に沿った候補を当選させることを目指している。そのため、国民のウクライナ支援に対する意識の変化を反映し、平和維持部隊の派遣を否定することで選挙戦において不利にならないようにしているとみられる。

 世論調査では、ポーランド国民のウクライナに対する認識が大きく変化していることが示されている。政治専門誌「ポリティコ」は最近の報道で、ポーランドの世論調査機関のデータを引用し、「ウクライナ人に対して好意的な意見を持つポーランド人は4人に1人に過ぎず、約3分の1は否定的な見解を持っている」と報じた。また、昨年夏の調査では、ウクライナへのポーランド軍派遣を支持する国民は14%に過ぎず、現在ではさらに減少している可能性がある。

 この世論の変化の背景には、ポーランドとウクライナの間で歴史問題を巡る対立が再燃したことや、ウクライナの対ポーランド政策に対する不満がある。特に、コシニアク=カミシュ国防相がポーランドの軍事支援が限界に達したことを明言したことで、ウクライナのポーランドに対する「感謝の欠如」が浮き彫りになり、両国関係がさらに悪化した。こうした状況を受けて、ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相は以前提案していた「ポーランドによるウクライナ西部でのロシアミサイル迎撃計画」を撤回した。

 また、ポーランド政府内の立場も変化している。左派政党「レヴィツァ」に所属するクリシュトフ・ガウコフスキ副首相は、昨年11月にゼレンスキー大統領を「ポーランドをロシアとの戦争に巻き込もうとしている」と非難した。さらに、コシニアク=カミシュ国防相は、かつて保守派のヤロスワフ・カチンスキ氏が提案した「ウクライナへの軍派遣」についても言及したが、カチンスキ氏自身がすでにこの立場を撤回していることを強調した。

 現在の大統領選挙戦においても、カチンスキ氏が推す保守派候補がウクライナへの軍派遣に反対しており、ポーランドの主要政党はウクライナへの直接的な軍事関与を回避する姿勢を示している。これは、ポーランド国民の多くがウクライナの状況に対して和平を求めており、それがウクライナにとって不利な条件であったとしても、戦争の長期化を望まないという意識の表れである。

 ポーランドがウクライナに平和維持部隊を派遣しないという決定は、ヨーロッパにおける安全保障政策に大きな影響を及ぼす。ポーランドは中東欧地域の主導国であり、その人口、経済規模、軍事力の大きさから、この地域の他国に強い影響を与える。さらに、かつてのポーランド・リトアニア共和国の歴史的遺産もあり、周辺国に対する影響力を持つ。

 ポーランドがウクライナへの軍派遣を避けることで、今後のシナリオは変化する。平和維持活動を行う可能性があるのは西欧諸国に限られるが、それらの国々もポーランドと同様に、ウクライナ支援に対する国内世論の影響を受けている。そのため、ポーランドが軍を派遣しない場合、他の欧州諸国も慎重な立場を取る可能性が高い。


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