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「アメリカ・ファースト」政策にはより多くの多国間主義で
2025-03-01


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【概要】
 
 米国の攻撃的な関税政策が世界経済に大きな影響を与え、国際貿易ネットワークに圧力をかけている中、BRICS諸国と新興経済国は、地域協力を深化させ、多国間メカニズムを活用することで、自国の利益を守り、一国主義の影響を乗り越える必要がある。

 ブラジルのマウロ・ヴィエイラ外相は、「BRICSはこれまで以上に重要であり、多国間主義の危機に対する最良の対応策は、より多くの多国間主義である」と発言したと、2月27日付の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が報じている。

 この見解は、世界統治における多国間主義の不可欠な役割を再認識させるものであり、特に現在の米国政権がBRICS諸国を含む貿易相手国に対して関税の引き上げを継続的に示唆している状況において重要である。

 トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策は、多国間貿易体制に対する挑戦として表れており、世界のサプライチェーンを混乱させるとともに、企業の不確実性を高め、貿易環境の不安定化を招いている。

 特に発展途上国にとって、米国の一方的な措置の影響は深刻であり、悪化する貿易条件や輸出制限に直面するとともに、急速に変化する世界の供給網に適応する必要がある。関税の引き上げを回避するために、譲歩を余儀なくされる国もあるが、それは短期的な利益につながる可能性があるものの、自国の産業や長期的な経済発展にとっては不利益となる場合がある。

 さらに、トランプ政権の供給網再編の試みは、発展途上国間の緊張を高め、競争を煽ることで、発展途上国同士の対立を引き起こす可能性がある。

 こうした状況において、新興市場と発展途上国を代表するBRICS諸国の役割と立場は一層重要になっている。BRICSは世界人口の約47%を占め、世界GDPの約30%、貿易総額の5分の1を占めている。国際通貨基金(IMF)は2024年10月、世界経済の成長は先進国よりもBRICS諸国に依存する傾向が強まるとの予測を発表している。この経済規模と成長力を背景に、BRICSは一国主義に対抗し、より公正かつ公平な国際貿易体制を推進する力を持っている。

 また、BRICS諸国は米国市場へのアクセスから恩恵を受けている一方で、米国もBRICS諸国の製品や供給網に依存している。仮に米国がBRICSに対して高関税を課せば、米国自身も巨大な消費市場との結びつきを失うだけでなく、重要な供給網を混乱させることになる。この相互依存関係は、一方的な措置ではなく、バランスの取れた協力的な貿易政策の必要性を示している。

 いかなる観点から見ても、一国主義的な措置では世界が直面する複雑な課題を解決できず、むしろ世界経済の安定を損なう恐れがある。このため、BRICSと発展途上国がより結束した多国間協力体制を構築し、グローバル・サウスの経済的利益を保護し、より安定的で公正かつ持続可能な国際経済の実現に貢献することが求められる。

 そのためには、BRICS諸国は多国間主義の原則を揺るぎなく堅持し、経済協力を一層深化させ、より緊密な経済的結びつきを構築する必要がある。国内では、産業の革新と高度化を推進し、国際市場における競争力を強化することが求められる。地域レベルでは、貿易と投資の自由化を促進し、経済協力に適した環境を整備することが重要である。

 特に、グローバルな供給網における協力強化は、BRICS諸国が主導すべき重要な分野である。供給網の上流と下流に位置する国々が協力を強化することで、資源の共有、相互補完的な発展、そして相乗効果の創出が可能となる。

【詳細】
 
 米国の関税政策とその影響

 米国の関税政策は、特にトランプ政権の「アメリカ・ファースト」戦略のもとで強化され、世界貿易に大きな影響を与えている。米国は、貿易赤字の是正や国内産業の保護を名目に、中国をはじめとするBRICS諸国やその他の貿易相手国に対し、高関税措置を適用している。


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