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【概要】
ポーランド国民の間でドナルド・トランプの信頼性に対する疑念が高まっており、これが米国にとって二面性を持つ問題となっている。一方では、ポーランドがNATO内で主導的な役割を果たそうとする動きを加速させ、米国の「アジアへの回帰(Pivot back to Asia)」戦略に伴う欧州への関与縮小を補完する形となる。他方で、ポーランドがフランスとの関係を強化し、米国とのバランスを取る動きを見せており、場合によってはフランスへの全面的な軸足移動(ピボット)が起こる可能性もある。
2025年3月初旬にポーランドの新聞「ジェチポスポリタ(Rzeczpospolita)」が実施した世論調査によれば、ポーランド国民の46.3%が現在の米国を自国の安全保障の信頼できる保証人とは見なしていない。この見解は、特に高等教育を受けた人々(56%)、女性(49%)、男性(42%)、50歳以上の国民(52%)の間で強く見られる。一方で、32.7%が依然として米国を信頼できると考え、20.39%は意見を持っていない。この調査は無作為に選ばれた800人のインターネットユーザーを対象に実施された。
この傾向は、米国とロシアの間で進行中の「新デタント(New Detente)」と関連している。トランプはプーチンとの関係改善を目指し、一連の現実的な妥協策を模索しているが、ポーランドの視点からは、これがウクライナの利益を犠牲にする可能性があるため懸念されている。また、この調査結果は、ポーランド国内の政党支持の違いを反映しており、米国を信頼できないと考える46.3%の人々の割合は、リベラル・グローバリスト的な現政権を支持する層の割合と一致している。
この動きは、米国にとって二面性を持つ。ポーランドがNATO内での主導的な地位を強化し、米国が欧州における安全保障責任を徐々に委譲する上で、都合が良い側面がある。しかし、同時にポーランドはフランスとの関係を強化しつつあり、米国との距離を調整するための手段としてフランスを活用している。さらに、状況次第ではポーランドが米国から離れ、フランスへ全面的に軸足を移す可能性もある。この背景には以下の要因がある。
・2月19日:「ポーランドは再び米国の欧州における最重要パートナーとなる見込み」
・3月6日:「フランス、ドイツ、ポーランドは戦後ヨーロッパの主導権を争っている」
・3月14日:「フランスの次回核演習は、ポーランドとの Prestige-Building Exercise になる可能性がある」
・3月15日:「ポーランドの核兵器取得の議論は、米国との交渉戦術として誤った方向に進んでいる可能性がある」
・3月16日:「欧州議会は、EUの東方安全保障戦略におけるポーランドの中心性を確認した」
トランプ政権(トランプ2.0)にとっては、ポーランドがフランスとの安全保障協力をさらに強めることを防ぐため、何らかの象徴的な措置を講じるのが最善と考えられる。例えば、米軍がポーランドから撤退しないことを宣言する、あるいはドイツ駐留部隊の一部をポーランドへ移転させるといった対応が考えられる。ロシアはこの動きを歓迎しないと予想されるが、米国が引き続きポーランドに影響力を保持することは、ロシアにとっても一定の利益となる可能性がある。これは、ポーランドがフランスの影響下に入るよりも、米国の影響下に留まる方がロシアにとって管理しやすい状況を生むためである。
フランスの戦略的な狙いは、ドイツを排除しつつポーランドと提携し、戦後ヨーロッパにおける主導権を確立することである。その上で、ポーランドを「ジュニア・パートナー」として取り込みつつ、ドイツとの従属的関係とは異なる、より対等な関係を築こうとしている。一方で、ポーランドの利益は国内の政治的立場によって異なる理解がなされている。