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【概要】
トルコとロシアは黒海地域において主導的な勢力であり、互いに競争しつつも戦争を回避するために慎重なバランスを保っている。トルコはロシアに対して警戒心を抱きながらも、EUやNATOとの整合性よりも地域の安定を優先しており、そのため西側諸国との関係は緊張を強めている。このような状況の中、ウクライナ戦争後のロシアを抑制するために、ヨーロッパはトルコとの再協力を進める必要があり、黒海がその第一歩となるべきである。
NATOはトルコとの限定的なパートナーシップを重視し、ロシア以外の沿岸国への過度な関与よりも、ルーマニアやブルガリアとの地域協力を支持すべきである。また、EUは黒海の安全保障、コーカサスの安定、防衛産業協力といった相互の利益のある分野での協力を促進することで、トルコとの関係を改善できる。
トルコのエルドアン大統領は「我々の黒海」と表現し、ロシアのプーチン大統領との会談でウクライナからの穀物輸出を可能にした取引を再確認した。この表現は、黒海におけるトルコとロシアの政治的な力関係を示唆している。黒海はロシアの戦略的利益にとって極めて重要であり、ロシアはこの海を通じて南部の防衛や地中海へのアクセスを確保している。一方、トルコは黒海沿岸で最も長い海岸線を持ち、ボスポラス海峡とダーダネルス海峡を通じて地中海へのアクセスを管理している。1936年のモントルー条約は、トルコに黒海への海軍アクセスを規制する権限を与え、過去数世紀にわたるロシアとの対立の根本的な問題を整理した。
黒海はウクライナ戦争における南の戦線であり、ウクライナにとって外洋への唯一の出口である。そのため、ウクライナの経済および軍事の生存にとって極めて重要な地域である。ロシアの侵攻後、トルコは交渉を継続しているが、欧州の同盟国はトルコの世論を安定させるために、トルコがロシアと対立した際に孤立しないことを保証する必要がある。特に、欧州の防衛制裁の影響を受けたトルコ海軍は、ドイツからの必要な部品や弾薬の供給停止によって打撃を受けた経緯があり、これに対する関係修復が求められる。
トルコとの再協力は容易ではないが、欧州にとって戦略的な転換点となる可能性を秘めている。この協力は、ヨーロッパの防衛戦略にトルコを組み込む機会を提供するが、ロシアとの関係におけるトルコの慎重な姿勢を考慮する必要がある。ロシアとの対立を超えて、NATOの欧州同盟国は、トルコが欧州安全保障に貢献できる分野を模索するべきである。具体的には、黒海の安全保障、防衛産業協力、ウクライナにおける公正かつ持続可能な解決への圧力といった領域でのトルコ・欧州の連携強化が求められる。
トルコは、ロシアの政治的および軍事的影響を受けやすいブルガリア、モルドバ、ルーマニアなどの黒海沿岸国との協力に意欲を示しており、ウクライナ海軍の近代化支援においても重要な役割を果たしている。トルコの軍事的・政治的強化は、欧州の広範な安全保障戦略において一定の優位性をもたらすと考えられる。黒海モデルは、トルコとの協力のひな形となり、NATOのパートナーとしてのトルコの自信を高めることにつながる。これはヨーロッパの全ての安全保障問題を解決するものではないが、戦略的な出発点となる可能性がある。
【詳細】
トルコとロシアは黒海地域において主導的な勢力であり、歴史的に競争関係にあるが、双方とも全面的な軍事衝突を回避するために慎重なバランスを維持している。トルコはNATO加盟国でありながら、ロシアとの経済的・戦略的関係を重視し、特にエネルギー供給や防衛協力の分野で一定の協力を進めている。一方、ロシアは黒海を南部防衛の要衝とみなし、クリミアを含む地域の軍事プレゼンスを強化している。
トルコの戦略的立場