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中国:航空宇宙分野において自主的かつ指導的地位を拡大
2025-04-20


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【概要】

 中国の国産大型水陸両用消防機「AG600(Kunlong)」が中国民用航空局(CAAC)から型式証明(Type Certificate)を取得したことが報じられた。これは当該機体が航空適合性基準を満たしていることを示すものであり、正式な市場投入の準備が整ったことを意味する。2025年4月20日、中央テレビ(CCTV)が伝えた。

 AG600は中国航空工業集団公司(AVIC)によって開発された機体であり、世界最大の民間用水陸両用航空機とされている。最大離陸重量は60トン、最大で12トンの消火用水を搭載可能である。巡航速度は時速220キロメートル、航続距離は4,500キロメートルに及び、森林火災対応、物流輸送、通信支援などの任務に適しているとされている。

 AG600の開発は、中国の航空産業における技術的成果であり、緊急救援、災害対応、空中消火能力の大幅な向上をもたらすものと位置づけられている。これまでに陸上、水上、海上での各種試験飛行を成功させており、2025年2月には最終段階の試験を完了し、認証飛行を成功裏に終えたとされる。

 当該機体の特徴は、陸上および水上の双方での運用能力を備える点にある。この点は設計上の大きな挑戦であり、特に空気と水という性質の大きく異なる媒質(密度差約800倍)を相手にする必要があった。これに対応するため、AG600の開発チームは風洞実験および流体力学試験を1万回以上実施し、飛行性能と航行性能の両立に成功した。

 AG600は船体形状を有し、翼端には水上安定用のフロートが設けられている。また、船体下面には段付き船体(ステップド・ハル)と波消し溝が施され、水上航行時の効率性を高めているとされる。これらの構造は、水陸両用運用に必要な技術的要件を満たすために設計されたものである。

 今回の型式証明の取得により、次に必要となるのは量産に向けた製造証明(Production Certificate, PC)および個別機体ごとの耐空証明(Airworthiness Certificate, AC)である。これらの手続きが完了した後、AG600は正式に商用運用に入ることになる。

 この成果は、単なる技術的達成にとどまらず、中国が航空宇宙分野において自主的かつ指導的地位を拡大していることを象徴するものとされている。大型特殊用途航空機の開発において中国が新たな段階に到達したことを示す出来事であり、同国の航空産業の国際的地位の向上にもつながるものであると報じられている。

【詳細】

 機体概要

 AG600「Kunlong」は、中国航空工業集団公司(AVIC)が開発した大型水陸両用航空機である。これは中国における国家重大特殊用途航空機プロジェクトの一環として設計されたものであり、同国が航空技術面において独自開発能力を有していることを示す象徴的機体とされている。

 本機の最大離陸重量は60トンに達し、最大12トンの水を搭載できる能力を備える。これは主として森林火災時の大量散水による消火任務を意図した設計である。加えて、AG600は物資輸送や無線通信支援、災害救助任務など、多目的な運用に対応可能とされている。巡航速度は220km/h、最大航続距離は4,500kmに及び、広域作戦や遠隔地での任務遂行に対応可能である。

 設計的特徴と技術的挑戦

 AG600の最大の特徴は「陸上と水上の双方での離着陸・航行能力」を備えている点にある。これにより、空港のインフラが不十分な地域や、海上での緊急対応が求められる場面においても運用可能である。こうした両用性を実現するにあたり、設計上の難題がいくつか存在した。

 とりわけ重要な課題は、空気(飛行時)と水(航行時)という、物理的性質が著しく異なる媒質を対象とした性能最適化である。具体的には、空気と水の密度差は約800倍にも及び、それぞれの環境における機体挙動、圧力、抗力、浮力などのパラメータが大きく異なるため、機体設計には精密な調整が必要であった。

 開発チームはこの課題を克服するため、風洞実験および水流・波浪試験などの流体力学的検証を1万回以上実施し、飛行時と水上走行時の両方で安定した挙動を確保するための技術的解法を確立した。


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