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【桃源寸評】
米国の態度は世界貿易機関(WTO)のルールに反する可能性がある。以下に、WTO協定の条項に照らして、米国の行動が違反していると考えられる点を列挙する。
〓米国の行動とWTO違反の可能性(条項別)
@最恵国待遇(MFN)原則違反
〓該当条項:GATT第1条(最恵国待遇)
米国が「中国と貿易を制限すれば関税を免除する」と他国に持ちかけている行為は、特定国(中国)との関係を理由に他国への待遇を差別的に変えるものであり、全加盟国を平等に扱うMFN原則に違反する可能性がある。
A 貿易制限の不当な誘導(圧力)
〓該当条項:GATT第11条(数量制限の一般的禁止)および第23条(WTOの精神違反)
他国に対し、「中国との貿易を減らせ」という政治的・経済的圧力をかけること自体が、数量的制限(Quota)や輸出入制限の誘発を目的とした第三国への干渉とみなされるおそれがある。
B 差別的関税政策の強要
〓該当条項:関税・貿易に関する一般協定(GATT)第24条、GATT第28条(関税譲許)
関税の免除を政治的な見返りとする行為は、関税の透明性および非差別性を求める原則に違反する可能性がある。WTOでは関税の改定には正当な手続きと多国間協議が必要である。
C 不透明な貿易政策
〓該当条項:WTO設立協定附属書2「貿易政策レビュー機構(TPRM)」の趣旨
関税免除の条件として非公式・非公開の圧力を用いることは、貿易政策の透明性を損なう行為であり、TPRMの精神に反する。
D 単独措置による経済的報復の試み
〓該当条項:DSU(紛争解決了解)第23条
WTO加盟国は、紛争がある場合にはまずWTOを通じた協議と手続を経る義務がある。これを無視して一方的な関税免除・課税の操作を行うのは「自己救済の禁止」原則に違反する。
〓以上のように、米国が示唆する「関税免除と引き換えに中国との貿易制限を求める」という行動は、WTOの基本的な原則(非差別、公平、透明性、協議義務)に違反している疑いが濃厚である。
〓道義的面での問題点
@ 他国の主権・判断を軽視する行為
各国は自国の国益に基づいて独自に貿易政策を決定する権利を有している。米国が経済的な力を用いて、他国の政策選択を事実上強制することは主権の侵害に等しく、倫理的に不当である。
A 経済的利益を盾にした「恫喝的交渉」
「中国との関係を断てば特権的な利益を与える」とする姿勢は、取引相手に対する圧力・脅しに近い行為であり、道義的なフェアネス(公正さ)を著しく欠いている。
B グローバル経済における信頼関係の破壊
国際貿易は、信頼と相互尊重に基づく多国間の協調によって成り立っている。これを政治的意図で操作・利用することは、ルールベースの国際秩序を損なう行為であり、道徳的責任に欠ける。
C 経済的分断を助長する不道徳性
米国のような影響力の大きい国が分断・排除を助長するような政策をとると、グローバルサウスや新興国を含む多くの国々の発展の機会を奪うことになりかねない。これは道義的に容認され難い。
D 共通善の理念に反する
「全体の利益(共通善)」を目指すべき国際社会において、自国の利益のために他国同士の対立や競争を煽る行為は、公共善や持続可能な共存という倫理原則に反する。
〓米国が経済的な圧力を通じて他国の対中貿易関係を制限させようとする態度は、国際的な倫理規範・道徳的価値観の観点からも大きな問題を孕んでおり、信義、正義、公平、尊重といった原則を著しく損なう行為と評価できる。
〓まとめ
1.国際法上の問題点(WTO法・国際通商法に基づく)
@ 最恵国待遇(MFN: Most-Favored-Nation Treatment)原則違反