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米国における極超音速兵器産業の基盤は脆弱
2025-04-29


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【概要】

 アメリカ海軍が極超音速ミサイル開発計画「HALO(Hypersonic Air-Launched Offensive)」を中止した事実を詳述している。

 アメリカ海軍は、次世代極超音速ミサイルであるHALO(Hypersonic Air-Launched Offensive)計画を中止した。この決定は、開発費の高騰、性能面の不確実性、そして中国の同種兵器の急速な進展に直面する中で下されたものである。

 HALOは、OASuW Inc 2(Offensive Anti-Surface Warfare Increment 2)計画の一環として開発されていた。目的は、高価値の海上目標に対して長距離からのスタンドオフ攻撃を可能とすることであった。早期運用能力(EOC)は2029会計年度、初期運用能力(IOC)は2031年に設定されていたが、2024年秋、財政的・運用的観点から実現不可能であると判断され、開発中止が決定された。これは、同計画を担当するスティーブン・テッドフォード海軍少将により確認された。

 代替として、既存のOASuW Inc 1に属するロッキード・マーチン社製のLRASM(Long Range Anti-Ship Missile)に対し、精度および有効性を高めるためのハードウェアおよびソフトウェアの大幅なアップグレードが実施される予定である。

 2025年のSea Air Space展示会において、ノースロップ・グラマン社を含む業界関係者は、HALOの実現可能性や費用対効果についての懸念を表明しており、当該計画が困難な状況にあることが示唆されていた。

 HALO計画の中止は、アメリカの兵器産業基盤が財政的・戦略的に再調整を迫られている現状を反映している。また、高速かつ高精度の攻撃手段が必要とされる状況下において、米軍が即応性に欠ける現実を浮き彫りにするものである。

 2025年3月のアトランティック・カウンシルの報告では、マイケル・ホワイトが極超音速兵器の優位性について述べており、例えば800km先の目標に対し、トマホークやJASSMなどの亜音速ミサイルでは1時間かかるところを、極超音速巡航ミサイルでは10分未満で到達できるとしている。また、グアムから台湾海峡までHGV(Hypersonic Glide Vehicle)を用いれば30分以内に到達可能であるという。

 しかし、従来型のステルス性を備えた亜音速ミサイル、特にLRASMは、極超音速兵器に比して低いレーダー反射断面、微弱な赤外線シグネチャ、高度な自律誘導システムなどの特長を有しており、電子戦環境下における生存性と精密性が確保されている。さらに、協調型の群攻撃やデータ共有能力もあり、戦術的には極超音速兵器に代わる効果的な選択肢として評価されている。

 ただし、戦略的な観点では、HALOの中止により、敵の接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略に対抗するための能力にギャップが生じる懸念がある。2023年1月の米議会予算局(CBO)報告によれば、極超音速兵器は大気圏内の低空飛行を行うことで、宇宙空間に対応した中間段階迎撃システムを回避可能であり、戦闘初期に敵の沿岸防空網、レーダー、および打撃システムを無力化できる可能性がある。

 しかし、米国における極超音速兵器産業の基盤は脆弱であり、同兵器の広範な配備を妨げる要因となっている。2025年4月に公表された米議会調査局(CRS)の報告では、米国防総省が未だ正式な調達計画を確立しておらず、また、マッハ8以上の飛行環境を再現できる試験施設も国内には存在していないことが指摘されている。加えて、試験飛行のスケジュールは、限られた飛行回廊、試験場、支援装備の不足によって常に遅延している。

 一方、LRASMの生産基盤は比較的成熟している。2023年4月のAir & Space Forces Magazineによれば、ロッキード・マーチン社はLRASMおよびJASSMを年間500発以上生産しており、生産能力を1,000発に拡大することを目指している。両ミサイルは多くの部品を共有し、同じ生産ラインで製造されており、顧客の需要に応じて名称が付与されているという。


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