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【概要】
ドナルド・トランプ大統領およびJ.D.バンス上院議員によるロシアとの交渉に関する最新の発言から、米国が和平交渉における立場を明確に強硬化させていることがうかがえる。トランプは、ゼレンスキー大統領の主張と歩調を合わせ、無条件の30日間停戦を要求するとともに、その停戦が破られた場合には制裁を課すと警告した。バンスは、ロシアがウクライナに対し係争地域からの完全撤退を求めている点について、「要求が過大である」と述べている。
これらの発言は、2025年3月下旬に始まった和平交渉に対する米国の不満が高まっていることを示しており、同交渉の破綻と、それに続く米露間の代理戦争の激化を予兆している可能性がある。
トランプは和平交渉が失敗した場合には、ロシア産原油を購入する国に対して厳格な二次制裁を科すと予告していた。1カ月後、彼はプーチン大統領が交渉を引き延ばしていると示唆し、その制裁の可能性を再確認した。この間、米国とウクライナは長らく待望されていた鉱物供給に関する協定を締結しており、予測していた通り、これに続いて米国からの追加兵器供与が実施される見通しとなった。
また、これらの動きとは別に、プーチン大統領と中国の習近平国家主席がモスクワで7時間に及ぶ会談を行っており、これは実質的にロシア側の対応策であると解釈される。会談直前には、「ウクライナ和平交渉が決裂した場合に発動される大規模な合意を両者が取り決める可能性がある」と予測されており、実際にその通りの展開となった可能性がある。これがトランプの発言の背景にあると考えられる。
ロシアは、ミンスク合意時代の前例から、無条件の30日間停戦がウクライナに兵力再配置や再武装の機会を与えると警戒しており、これに反対している。ロシアが求めるのは、自国が法的に領土と見なしている係争地域全域の掌握と、それらの地域に対する「完全な併合と非ナチ化」である。
これに対して、バンスの発言は、米国がロシアのこの要求を過剰と見なしており、ウクライナに対してそのような撤退を強制する意志がないことを明確に示している。従って、トランプの停戦要求は、ロシアの意向に反して現在の前線(接触線)を事実上固定化させることを意図している可能性がある。
さらに、停戦に応じない場合の制裁措置、特にロシア産原油の購入者への二次制裁は、プーチンとその主要な石油輸出先に対する圧力として機能することが見込まれる。トランプは最近、トルコのエルドアン大統領との電話会談において、ウクライナ戦争終結に向けた共同の努力について議論したと明かしており、また中国に対しても協力を要請する可能性に言及している。これにより、米国はエルドアンと習近平に対し、プーチンへの圧力をかけるよう促す構えであると考えられる。加えて、インドのモディ首相もまた、ロシアの主要な原油購入国であることから、この圧力の枠組みに巻き込まれる可能性がある。
このような状況の下で、和平交渉が継続するには、ロシアが前線を突破して軍事的優位を確立するか、もしくは米国から実質的な譲歩を引き出して停戦に応じるなどの大きな転機が必要となる。公に知られることのない非公開の取引が行われる可能性もあるが、現時点でその見通しは不透明である。
結論として、現在の情勢は、和平交渉の破綻と、それに伴う米露代理戦争のエスカレーションを示唆している。米国は、自国の立場を明確にし、交渉決裂の原因を対外的に説明しつつ、制裁強化とウクライナへの武器供与を通じた対応を準備していると見られる。
【詳細】
1.米国の交渉姿勢の変化とその背景
2025年3月末から始まった米露間の和平交渉において、米国の態度は当初、交渉継続の可能性を探るものであった。しかし、4月以降、トランプおよびバンスの発言により、明確に強硬化していることが示された。