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戦争が長期化することで、イスラエルの国家的疲弊が進行中
2025-05-22


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【概要】

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が現在進めているガザ地区に対する軍事行動と、その政治的・戦略的帰結について論じたものである。筆者は、この戦争継続によってイスラエル自体が内部から崩壊しつつあると分析している。

 ネタニヤフ首相は「ハマースの粉砕と壊滅」を戦争の目標として掲げているが、自国の情報機関の見解によれば、その達成は現実的ではないとされている。それにもかかわらず、新たな軍事作戦「ギデオンの戦車作戦(Gideon’s Chariots)」を発動し、ガザ地区の全面再占領を目指す姿勢を見せている。

 この直前には、アメリカの仲介により、2023年10月7日にハマースに拘束されたイスラエル系アメリカ人兵士イダン・アレクサンダーの解放が実現していた。ハマース側によれば、その見返りとして米国はイスラエルに対してガザへの人道支援物資搬入を認めるよう圧力をかけると約束したとされている。

 しかし、イスラエルは人道支援を認めるどころか空爆を強化し、48時間で30万人以上のパレスチナ人を避難させ、約300人を殺害した。この後、ネタニヤフ首相は「全ての捕虜が解放されても戦争は終わらない」と明言した。

 一方で、アメリカ国内ではネタニヤフとトランプ大統領との関係に不協和音があるとの報道が相次いだ。トランプがイスラエル訪問を見送り、パレスチナ国家承認を検討しているという話も出たが、トランプ本人はこれを否定している。

 米国のマルコ・ルビオ国務長官もCBSニュースのインタビューで「ハマース壊滅を支持する」と述べた一方で、捕虜解放の交渉も継続中とし、米国が戦争の主目的を捕虜問題とは見なしていない姿勢を示した。

 過去には、バイデン前大統領もイスラエルに対して怒りの言葉を発したとされる報道があるが、イスラエルへの実質的圧力が行使された証拠はない。むしろ、米国はイスラエルの戦争遂行を事実上支援し続けており、表向きの声明と現実の政策には乖離が見られる。

 イスラエル軍は現在、ガザの緩衝地帯に駐留し、ガザ全域を制圧せずに民間人への圧力を強める手法を取っている。ネタニヤフ首相は食料・水・燃料・医療物資の搬入を全面的に禁止することを誓っており、これは戦争犯罪に該当する可能性があるとして国際社会の批判を招いている。

 しかし、ネタニヤフ首相の政権を支える宗教シオニズム政党の圧力により、人道支援の許可は政権崩壊の引き金となりかねないため、限定的な支援搬入を演出しつつ、軍事作戦を継続するという政治的芝居が行われている。

 さらにネタニヤフ首相は、ガザに留まらずイランへの攻撃も視野に入れている。これには、イランの核施設への限定的攻撃が含まれており、米国は支援的役割にとどまると見られている。イスラエルが空爆能力を失った場合、ヒズボラが南レバノンを「解放」する動きを強める可能性もある。

 ガザには十数の武装組織が依然として存在しており、イスラエル軍がこれら全てを殲滅した形跡はない。ネタニヤフ政権は、ガザの内部占領や人道支援の軍事的管理・民営化を試みているが、国際機関やエジプトなど周辺国からの強い反発を受けている。

 結論として、筆者は「トータル・ビクトリー(全面的勝利)」は実現不可能であり、戦争継続がイスラエルにとって致命的な結果を招く可能性が高いとする。ガザ、西岸、シリア、東エルサレム、さらにはイスラエル国内の不満が臨界点に達すれば、突然の崩壊が起きても不思議ではないと警告している。

 米国はイスラエルの「公式な応援団」と化しており、軍事支援を続ける一方で戦略的な見直しを行っていないと批判されている。筆者は、2023年10月7日のような予期せぬ事態が再発する危険性が高まっていると結んでいる。

 
【詳細】 

 ネタニヤフ首相の戦略的袋小路


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