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「Meteor-1(メテオ・ワン)」:世界初の高並列光コンピューティング統合チップ
2025-07-13


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【概要】

 中国の研究者は、「Meteor-1(メテオ・ワン)」と名付けられた世界初の高並列光コンピューティング統合チップを開発した。これは、フォトニック(光)コンピューティング分野における重要な成果である。このチップの開発は、人工知能(AI)産業の発展に大きな影響を及ぼす可能性があると専門家は述べている。

 近年、生成系AIの発展に伴い、AIモデルの開発、学習、展開に対する計算需要が急増している。しかし、従来の電子チップは、速度やサイズ、スケーラビリティの限界に直面しており、これにより光、すなわち光子を用いてデータを転送する「光コンピューティング」への関心が高まっている。

 ケンブリッジ大学の光工学准教授でトリニティ・カレッジのフェローであるアミット・アグラワルによれば、光は電気信号に比べて多くの自由度を持ち、より高速かつ効率的にデータを転送できるという。これにより、光の持つ本来的な能力を活かして、より多くの処理を実行可能になると述べている。

 特に「Meteor-1」の革新性は、そのハードウェアにある。既存の技術が10〓20の光チャンネルでデータを転送していたのに対し、中国の研究者はこれを100倍に拡張したとされており、これは極めて重要な進歩である。

 ピッツバーグ大学電気・コンピューター工学科のネイサン・ヤングブラッド准教授によれば、この研究に用いられた理論自体は新しくないが、それを実験的にここまで高い完成度で実現したことは評価に値するという。また、この分野の研究が注目される背景には、レイテンシ(遅延)や効率性といった課題があり、光コンピューティングはそれらに対する有望な解決策となり得ると述べている。

 Meteor-1は、チップのスケーラビリティと計算能力の面で大きな前進であるが、両名とも、このハードウェアはまだ実用化や商業生産の段階には達していないと指摘している。

 AIのような技術分野は、国際的な競争の核心に位置している。米国は近年、中国に対してAIチップを含む先端技術の輸出規制を行ってきたが、一部は撤回された。ヤングブラッドは、こうした規制によって特定の技術が使えなくなれば、人々は異なる方法でのイノベーションを試みるようになるとし、それが今回のような進歩の動機になっている可能性があると述べている。

 また、中国の科学界には、各工程における専門的知見が存在しており、設計・製造・測定といった要素すべてを統合する能力がこの成果を可能にしたと説明している。一方、米国ではこれらの構成要素を揃えるには多大な資金が必要であるという。

 アグラワルは、現時点ではフォトニック分野が電子分野のような技術輸出管理の対象にはなっていないことを指摘している。フォトニックコンピューティングが将来的に大規模化すれば、その構成技術の多くが輸出規制の対象外であることが大きな利点になると述べている。

 データセンターでは大量のエネルギーと冷却が必要であるため、光コンピューティングがその消費電力や発熱を抑える可能性が期待されているが、ヤングブラッドはそれに懐疑的である。100倍効率の良い技術が実現されても、使用量が100倍になれば総消費エネルギーは減らないという考えである。

 アグラワルも現時点では、光コンピューティングが低電力化を実現しているわけではないと述べている。現在の技術段階では、電子と光を組み合わせた「統合型アプローチ」が主流であり、相互変換に多くのエネルギーが必要である。

 両名とも、中国からの科学的成果がこの分野においてますます重要な貢献をしていると評価している。ヤングブラッドは、「この研究に用いられている技術は、世界中の研究者にとって有益である」とし、「理論的だと思われていたことが、実現可能だという証明になった」と述べている。


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