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円キャリー取引:金融のサンアンドレアス断層
2025-08-23


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【概要】

 日本の1999年への回帰と市場の懸念

 アジア・タイムズの記事によると、日本の債券市場は、26年前に日本銀行(BOJ)が初めて金利をゼロに引き下げた1999年の状況に逆戻りしていることを示唆している。日本の20年物国債(JGB)利回りは2.655%に達し、1999年以来の最高水準となった。これは、日本の経済、そしておそらく世界の市場にとって、今後の問題を示唆している。

 BOJの金融政策と現在の課題

 1999年以来、BOJは短期金利をゼロに近付けることを試みてきたが、成功していない。現在のBOJ総裁である植田和男は、2006年から2008年にかけて0.5%まで金利を引き上げた福井俊彦総裁の時と同じ水準に留まっている。福井総裁の時代には量的緩和が廃止され、金利が0.5%まで引き上げられたが、2008年のリーマン・ショックを受けて、量的緩和とゼロ金利に戻った。

 2013年には、黒田東彦総裁の指導の下、BOJはかつてない規模でJGB(国債)と株式を買い入れた。2018年までに、BOJのバランスシートは日本の経済規模を上回り、G7メンバーとして初の事態となった。イールドカーブ・コントロール政策により、実質的に金利はマイナス圏に押し込まれた。

 植田総裁は2023年4月に就任し、日本の金利環境を正常化させることを目指していた。しかし、米国の関税問題が浮上したため、BOJは利上げサイクルを中断している。日本の今年度の経済成長率が0.7%と見込まれる中、関税関連の不確実性が高まり、BOJはドナルド・トランプ米大統領の貿易戦争の行方が明確になるまで、事実上0.5%の金利に留まっている。

 中国経済と日本のリスク

 中国経済の成長鈍化も懸念材料となっている。BOJが中国の景気減速中に金融引き締めを続ければ、日本が景気後退に陥るのを早める可能性がある。キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、アビジット・スーリヤは、経済が持ちこたえ、関税関連の不確実性が薄れれば、BOJは早期に政策正常化を再開すると考えている。しかし、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのエコノミスト、アナベル・フィデスは、国内需要の低迷と外部環境の悪化が日本にとっての課題だと指摘している。

 日本の財政と国債市場

 JGB利回りが1999年水準に戻った背景には、政府が景気刺激のために財政支出を拡大するのではないかという懸念がある。日本は先進国の中で最も重い債務負担を抱えており、GDPの260%に達する。人口減少と高齢化が進む中、この状況はJGB保有者を不安にさせている。

 7月の選挙で自民党が振るわなかったため、窮地に立たされた石破茂首相が増加する公共支出を承認する可能性が高い。これは格付け会社をいら立たせる可能性がある。みずほ証券のアナリストは、財政拡大への懸念が続く限り、超長期ゾーンの金利は全体的に上昇圧力を受けるだろうと述べている。

 7月の外国投資家によるJGB購入額は、6月の3分の1に当たる33億ドルにまで減少した。これは、日本国債が安全資産としての魅力を失っている兆候である。また、6月と7月には債券の入札が不調に終わっており、8月19日の20年物国債の入札も需要が低調であった。

 円相場と米国の貿易政策

 日本国債の販売が困難になるにつれて、円が下落する可能性がある。円の急落は2つの即時的な影響をもたらす。一つは、円キャリー取引の破綻である。長年にわたり、投資ファンドは低金利の円を借り入れ、世界中の高利回り資産に投資してきた。そのため、円の急激な変動は世界中の市場に影響を及ぼす。T.ロウ・プライスの債券部門責任者であるアリフ・フセインは、円キャリー取引を「金融のサンアンドレアス断層」と呼んでいる。

 もう一つは、円安がトランプ政権の怒りを買うことである。東京が為替を操作しているというわずかな示唆でも、トランプは15%の関税率を引き上げる可能性がある。トランプ政権は日本への通貨操作国指定を検討し、石破首相への圧力を強めることが懸念されている。

 トランプ政権とドルの将来


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