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モディ首相とトランプ大統領の会談
2025-02-18


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【概要】

 モディ首相とトランプ大統領は先週ワシントンD.C.で会談を行ったが、その直前にトランプ氏がプーチン大統領と電話会談を行い、ウクライナに関する和平交渉を開始したことが大きく報じられたため、今回の米印首脳会談はメディアの注目をあまり集めなかった。しかし、この会談はインドの「多極的連携(マルチ・アライメント)戦略」を示すものとなった。

 会談の共同声明では、米印両国が貿易、軍事、エネルギー分野での協力を強化する方針が示された。この合意は、国際秩序が多極化に向かう中でなされたものであり、米国は引き続き世界における最重要プレイヤーの地位を維持しようとする一方、インドはその人口規模と経済力に見合う影響力の拡大を目指している。両国のこうした戦略目標は相互に矛盾するものではなく、協力によって達成可能であるとの認識が共同声明から読み取れる。

 バイデン政権はインドを地政学的に封じ込めようとし、国内問題にも干渉する姿勢を見せていたが、トランプ政権はこうした政策が米印関係に与えた悪影響を修復し、インドを対中国戦略の一環として位置付けようとしている。その見返りとして、米国はインドに対し、米国製品に対する関税の引き下げを求めている。ただし、軍事・エネルギー分野での協力強化を通じて、そのインセンティブを提供する姿勢を示している。

 具体的には、米国はインドに対し、F-35戦闘機の供与や、化石燃料の主要供給国となる可能性を示唆している。しかし、これらの分野ではロシアが現在インドの主要なパートナーであり、米国の提案はロシアの影響力と競合することになる。ただし、インドがこれらの提案を受け入れたとしても、それは必ずしも対ロシア政策の転換を意味するものではなく、むしろインドの多極的連携戦略の一環と捉えるべきである。インドは常に選択肢を確保することで、各国からより有利な条件を引き出し、自国の国益に最も適う提案を選択する方針を取っている。

 今回の会談で合意されたのは、あくまで「この方向に進む意図」であり、インドが米国の提案を不可逆的に受け入れたわけではない。そのため、この会談をもって米印関係の決定的な変化と見るのは時期尚早である。

 米印関係には依然として課題も残されている。特に、トランプ氏が求めるインドの高関税政策の大幅な見直しや、ロシア産原油に対する制裁の継続、さらにはイランのチャーバハール港に関する制裁免除の撤回の可能性などがある。これらの要因は、トランプ氏が目指す米印関係の修復を阻害する要因となり得る。場合によっては、インドがこれに反発し、ロシアからの原油輸入を拡大し、イランとの貿易を強化する可能性もある。

 さらに、米国がロシアのインド向け軍事・エネルギー供給を代替しようとすれば、ロシアは中国との経済的依存度を高めることになり、それが結果として中露関係の強化を促す可能性がある。その場合、中国がロシアの軍事協力を通じてインドとの国境問題で有利な立場を得ようとする動きが出ることも考えられる。このような事態は、インドの戦略的自立を損なうことにつながりかねず、インドはこれを回避しようとするだろう。

 そのため、インドはトランプ氏に対し、ロシア産原油の輸入および投資に関する制裁の免除や、チャーバハール港の制裁免除措置の維持を求める可能性がある。トランプ政権は、中露関係の強化を防ぐという観点からも、こうしたインドの要請を受け入れることで、インドを中国の影響力拡大に対する牽制役として維持する選択肢を模索する可能性がある。


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