https://www.asahi-net.or.jp/~np9i-adc/

ロシアとパキスタンを結ぶ最初の貨物列車サービス
2025-02-23


禺画像]
【概要】
 
 パキスタン鉄道貨物部門のCEOであるスフィヤン・サルファラーズ・ドガル氏は、ロシアとパキスタンを結ぶ最初の貨物列車サービスが2025年3月15日に開始されると発表した。この列車はイラン、トルクメニスタン、カザフスタンを経由し、ロシアのエネルギーおよび工業製品をパキスタンに輸出し、パキスタンの農産品や繊維製品をロシアに輸出する計画である。これは両国関係における重要な進展であり、以下の3点が主なポイントとなる。

 1. イランの不可欠な役割とそのリスク

 今回の計画は、ロシアとパキスタンがアフガニスタンを経由するルートではなく、イランを主要な経由地として優先していることを示している。これは、現在のパキスタンとタリバンの関係が不安定であることを考慮すると、合理的な選択である。しかし、イラン経由の貿易にはリスクも伴う。

 アメリカのドナルド・トランプ前大統領は、自身の政権時代に実施したイランに対する「最大限の圧力」政策を復活させており、イランと取引を続ける企業に対して二次制裁を課す可能性が高い。彼は、以前の政権でインドに与えた制裁免除措置を変更または撤回する可能性を示唆しており、パキスタンに対しても厳しい措置を取ると予想される。

 過去の事例から、パキスタンはアメリカのイラン制裁に従う傾向がある。特に、10年以上にわたり中断されているイラン・パキスタン・ガスパイプライン計画はその典型例である。したがって、パキスタンが今回の貿易ルートを維持するかどうかは、アメリカの圧力にどの程度耐えられるかにかかっている。

 2. パキスタンとタリバンの対立が最短ルートの障害に

 ロシアとパキスタンの貿易は、輸送コストと時間の面で、アフガニスタンを経由するルートの方が効率的である。しかし、現在のパキスタンとタリバンの関係が悪化しているため、そのルートは利用できない状態にある。

 パキスタンとタリバンの対立の根本には、双方の疑念がある。タリバンはパキスタンの軍部がアメリカと密かに協力していると疑っており、一方でパキスタン側はタリバンがパシュトゥーン人やバローチ人の武装勢力を支援していると非難している。これは、パワーバランスを調整するための非対称的な戦略の一環である可能性が指摘されている。

 ロシアはこの対立を仲介する立場にあるが、正式な調停を試みた形跡はまだない。仮に試みたとしても、対立の根本的な安全保障上の問題を解決できるかは不透明である。アメリカの制裁リスクを考慮すると、パキスタンがイラン依存を減らし、アフガニスタン経由のルートを確保することが望ましいが、現状では実現の見通しは立っていない。

 3. 両国の貿易拡大への意志

 課題が多い中でも、ロシアとパキスタンが貿易関係の強化を進めようとしている点は注目に値する。パキスタン国内には、中国への経済依存を軽減し、アメリカとの従来の政治的関係の枠を超えてロシアとの関係を深めようとする動きがある。これは、同国の指導層がリスクを分散しようとする戦略の一環と考えられる。

 ロシア側も、地政学的な変化の中で非伝統的なパートナー国との関係を強化する必要性を認識しており、パキスタンとの協力はその一環である。ただし、これはインドとの関係を損なうものではなく、ロシアにとっては両国とバランスを取る形での関係構築が重要である。

 結論

 ロシアとパキスタンを結ぶ最初の貨物列車サービスは、両国にとって経済関係を強化する重要な試みである。しかし、アメリカのイラン制裁とパキスタン・タリバン間の対立が、貿易ルートの維持と拡大に大きな影響を与える可能性がある。最善のシナリオとしては、パキスタンがアメリカの圧力に屈せず、タリバンとの関係を改善し、イランとアフガニスタンの両方を経由する二重のルートを確保することであるが、現状では実現のハードルは高い。

【詳細】


続きを読む


コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット