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【概要】
アルジェリアは、ロシアがマリ・トゥアレグ紛争において軍事供給の優位性を利用し、自国に譲歩を迫る可能性を懸念しているとみられる。このため、アルジェリアはインドおよびアメリカとの軍事協力を強化し、ロシア依存のリスクを分散させる動きを見せている。
ロシアは長年にわたりアルジェリアの主要な防衛パートナーであったが、アルジェリアは米国およびインドとの関係を拡大しつつある。2025年1月には、アルジェリアとアメリカが「初の試み」とされる軍事協定を締結し、米国防関係者によれば「武器の相互供給や共同配備の可能性」があると報じられている。また、アルジェリアの軍事高官は最近インドを訪問し、大量の新兵器調達を模索している。
背景には、2024年1月にマリが2015年のアルジェ協定を破棄した後、トゥアレグ武装勢力との紛争が再燃したことがある。2024年9月の国連総会で、マリ政府はアルジェリアが「テロ組織を支援している」と非難した。この「テロ組織」とは、反政府勢力であるトゥアレグ武装集団を指す。2024年7月には、これらの勢力がロシアのワグネル部隊を襲撃し、ウクライナの支援を受けていたとされる。この襲撃はアルジェリア国境付近で発生しており、ウクライナの軍事情報総局(GUR)やウクライナによる訓練を受けたトゥアレグ兵士が、アルジェリアを経由してマリに入った可能性が指摘されている。
ロシアは、マリを含む「サヘル同盟」諸国に軍事支援を提供しており、地域のテロ対策と安定化に貢献している。しかし、アルジェリアはマリ政府がトゥアレグ武装勢力を「テロリスト」とみなすことに同意しておらず、この点で両国の立場は対立している。さらに、アルジェリアはワグネルのマリ撤退を求める立場を取っている。
2024年7月のワグネル襲撃後も、ロシアは外交的配慮から強い反応を示さなかったが、アルジェリアはその後、軍事調達の多角化を加速させた。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータによれば、2019〜2023年のアルジェリアの軍事調達の48%をロシアが占めていたが、ロシアからの輸入は2014〜2018年と2019〜2023年で83%減少している。
アルジェリアは、ロシアがマリ紛争を巡る交渉で圧力を強める可能性を考慮し、インドと米国を新たな軍事供給源として選択した。これは、アルジェリアが従来から維持してきた東西バランス政策の一環ともいえる。この動向は、ロシアとアルジェリアの対立がマリにおいて一層激化し、それに伴い紛争の長期化や拡大を招く可能性があることを示唆している。
【詳細】
アルジェリアの軍事政策とロシアとの関係変化
アルジェリアは長年にわたりロシアを主要な軍事供給国としてきたが、近年はその依存度を下げ、多角的な軍事パートナーシップを模索している。その背景には、マリ・トゥアレグ紛争に対するロシアの対応や、地域の戦略環境の変化が影響している。特に、アルジェリアはロシアがマリ政府を支援することにより、マリ政府の主張する「テロリスト」(トゥアレグ武装勢力)に対して圧力を強めることを懸念しており、これがアルジェリアの軍事方針の転換を促した。
2025年1月には、アルジェリアとアメリカが「初の試み」とされる軍事協定を締結し、米国防関係者は「武器の相互供給や共同配備の可能性がある」と述べている。また、同時期にアルジェリア軍高官がインドを訪問し、大規模な兵器調達の交渉を行った。これらの動きは、アルジェリアがロシア依存を低減させ、東西の軍事バランスを維持するための措置であると考えられる。
マリ・トゥアレグ紛争とアルジェリアの立場
1. マリ政府とトゥアレグ武装勢力の対立