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ドイツが米国から「独立を達成」することを目指す
2025-02-28


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【概要】

 ドイツの次期首相とされるフリードリヒ・メルツは、2025年2月のドイツ連邦議会選挙後の討論会で、ドイツが米国から「独立を達成」することを目指すと発言した。これは従来のドイツの対米関係を考えると、極めて異例の発言であり、トランプが再び政権を握る中で、国際関係に大きな変化が生じていることを示している。メルツは次のように述べた。

 「ワシントンからの干渉(介入)は、モスクワからの干渉と同じくらい劇的で過酷であり、最終的には受け入れがたいものである。我々は二つの大国から極めて強い圧力を受けているため、最優先事項はヨーロッパの団結を強化することだ。私の絶対的な優先課題は、ヨーロッパをできる限り早く強化し、段階的に米国から本当に独立できるようにすることだ。数週間前には、テレビでこのようなことを語ることになるとは思いもしなかった。しかし、少なくともドナルド・トランプの先週の発言を受けて、米国〓少なくとも現政権の一部〓はヨーロッパの運命に無関心であることが明らかになった。」

 しかし、ドイツが米国からの独立を達成することは容易ではない。まず、ドイツ国内には約5万人の米軍が駐留しており、5つの陸軍駐屯地と2つの空軍基地を維持している。さらに、2024年には米国が中国を抜いてドイツの最大の貿易相手国となり、エネルギー面でも米国がドイツの最大のLNG供給国となった。特に2024年12月時点では、ドイツの総ガス消費量の約9%が米国からのLNGによって賄われていた。これらの要因を考慮すると、米国からの独立を実現することは困難である。

 一方で、米国はドイツの影響力低下を利用し、欧州内でより多極的なパワーバランスを形成する可能性がある。例えば、米軍の一部をアジアに再配置し、中国への抑止力を強化することや、ポーランドへ移転し、ポーランドを欧州における主要な同盟国とすることが考えられる。このような動きは、軍事面ではメルツの方針の成功に見えるかもしれないが、米軍基地周辺の地域経済に悪影響を与えるため、ドイツ国内では新たな経済的負担を生じさせる可能性がある。

 貿易面では、トランプ政権がドイツ製品に対する関税を引き上げる可能性があり、中国に対する関税強化と連動して、ドイツ経済に圧力をかける手段となる。現在、EUは米国と協力し、中国の過剰生産能力(特に鉄鋼など)が欧州市場に流入することを防ぐ方針をとっており、ドイツが米国と対立すれば、この状況がさらに複雑化する可能性がある。

 エネルギー分野での独立を達成するには、EUの対ロシア制裁を緩和し、ロシア産パイプラインガスの輸入を再開することが最も現実的な選択肢となる。しかし、バルト三国やポーランドがこの方針に強く反対することが予想される。また、現在の米欧間の緊張は、トランプの対ロシア政策が従来よりも穏健であることに起因しており、ドイツが対ロ制裁を解除することは、この矛盾を引き起こす可能性がある。

 それでも、ドイツは過去3年間、国益よりもイデオロギー的な政策を優先する傾向を示してきた。特に、トランプの政策に対する反発が、米国との関係見直しを加速させる可能性がある。ただし、ドイツが米国からの独立を目指せば、米国は対抗措置として、駐留米軍の撤退、貿易制裁、LNG供給の制限などを実施し、ドイツ経済に打撃を与える可能性がある。その結果、ドイツ国内で新たな政治危機が発生し、さらなる選挙を招く可能性もある。

 最終的に、この動きは欧州連合(EU)内の権力構造を変えることになり、ドイツ中心の「平和的覇権」体制が崩れる可能性がある。その代わりに、ポーランド、フランス、イタリアなどが影響力を分有する「多極的なEU」へと移行する可能性がある。これらの国々は、それぞれ米国にとって戦略的な重要性を持ち、中欧の影響力確保(ポーランド)、アフリカ政策(フランス)、地中海監視(イタリア)などの役割を果たすことができる。この過程では、ドイツの影響力が縮小し、EUの政治構造が大きく変化する可能性がある。

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