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米国が直面する「造船ギャップ」
2025-03-19


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【概要】 
 
 戦争が短期間で終結すると考えることは、米国にとって産業の回復力や造船能力の重要性を過小評価するリスクを伴う。歴史の教訓は、戦争がしばしば予想より長引くことを示しており、太平洋における海軍戦の長期化は、圧倒的な造船能力を持つ中国に有利に働く可能性が高い。

 このリスクを軽減するため、米国は産業の格差を埋めるための断固たる措置を講じる必要がある。そのためには、造船所のインフラへの投資、製造プロセスの合理化、海軍艦艇の建造に必要な熟練労働者の確保を進めることが不可欠である。さらに、戦時に迅速な造船を可能にするため、重要な資材や部品の備蓄も検討すべきである。これらの対策を講じなければ、米海軍は長期戦に対応できず、最終的にインド太平洋地域における戦略的優位を中国に譲り渡すことになりかねない。

【詳細】 
 
 米国が中国との海軍力競争において直面している「造船ギャップ(Ship Gap)」について論じている。米海軍は依然として技術的、運用的に優位にあるものの、中国の造船能力の圧倒的な規模と成長速度が、長期戦において米国に深刻な脅威をもたらす可能性があると指摘している。

 1. 米中の海軍戦力の推移
かつて米海軍は艦艇数で中国海軍を大きく上回っていたが、この優位性は過去20年で急速に失われた。

 ・2000年代初頭:米海軍は282隻、中国海軍は220隻
 ・2020年代半ば:中国海軍は約400隻、米海軍は約295隻
 
 単純な艦艇数の比較ではなく、米国はより大型で高性能な艦艇を持ち、原子力潜水艦や空母の数で優位に立つ。一方、中国は駆逐艦やフリゲート艦の大量配備を進めており、艦艇の数だけでなく質も向上している。

 2. 造船能力の差

 中国は世界最大の造船業を有し、年間の商船建造量は世界の他の国々の合計を超える。

 ・中国の造船能力:米国の約200倍
 ・戦時の影響:商船建造を戦時下で軍艦建造に転換する能力がある

 戦時における造船能力の差は、第二次世界大戦の日米戦に似ている。米国は日本よりもはるかに強力な産業基盤を持ち、短期間で大量の艦艇を建造することで最終的に勝利した。現代においては、その立場が逆転し、中国が短期間で艦艇を大量生産できる状況にある。

 3. 米国の海軍生産の遅れ

 米国の造船業は、戦時の急増に対応できる柔軟性を失っている。

 ・建造期間の長期化

  〓 空母:11年
  〓 原子力潜水艦・駆逐艦:9年
  〓 第二次世界大戦時の空母建造期間:約1年

 米国は熟練労働者の不足や生産効率の低下により、新造艦の配備が遅れており、戦時における迅速な補充が難しい状況にある。

 4. 中国の軍艦技術の向上

 米国は現在も質的に優位にあるが、その差は急速に縮小している。

 ・Type 055駆逐艦:米国の巡洋艦・駆逐艦と同等の性能
 ・空母・原子力潜水艦の増産:米国の半分の期間で建造
 ・さらに、中国は艦艇の建造だけでなく、ミサイルや弾薬の生産能力でも米国を凌駕しており、長期戦における米国の脆弱性が増している。

 5. 短期決戦のリスクと長期戦の脅威

 近年の戦争は短期決戦が多いが、長期戦に発展する例もある。

 ・短期戦の例

  〓 1991年 湾岸戦争(約7か月)
  〓 2008年 ロシア・グルジア戦争(16日)
  〓 2020年 第二次ナゴルノ・カラバフ戦争(約1.5か月)

 ・長期戦の例

  〓 2022年 ロシア・ウクライナ戦争(3年以上継続中)
  〓 1941-1945年 太平洋戦争(4年)
 
 米国が中国との戦争を短期間で終結できなければ、中国の圧倒的な造船能力によって、米海軍は徐々に劣勢に追い込まれる可能性がある。

 6. 米国が取るべき対策

 米国は中国の造船能力を考慮し、以下のような対策を取る必要がある。

 1.造船能力の拡充:新規造船所の開設、労働力の確保

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