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【概要】
ロシアがウクライナにおける地上戦を拡大し、スームィ州、ドニプロペトロウシク州、ハルキウ州へ進軍する可能性について論じている。主要な論点は以下の通りである。
1.ロシアの戦略的選択肢
現在、ロシア軍はクルスク州のウクライナ側への押し戻しを進めており、南西ドンバス戦線ではドニプロペトロウシク州の境界に迫っている。この状況で、プーチン大統領はロシアが2022年に編入を宣言した4州(ドネツク、ルガンスク、ザポリージャ、ヘルソン)のみに地上戦を限定するか、それともスームィ、ドニプロペトロウシク、ハルキウの各州に戦線を拡大するかの決断を迫られている。
2.拡大の意義
これらの地域に進軍することで、ドンバスやザポリージャの前線防御を迂回し、ロシアが完全制圧を目指す地域の攻略を有利に進められる可能性がある。2024年5月にハルキウ州へ進軍した前例があるが、当時は戦局が膠着し、目的は達成されなかった。しかし、現在の戦況は変化しており、スームィ州への進軍が成功すれば、ウクライナの防衛体制を揺さぶる「ドミノ効果」を引き起こせる可能性がある。
3.トランプ政権との関係
2025年のトランプ政権下でロシアと米国の間に「新デタント(緊張緩和)」が模索されているが、最近のプーチン・トランプ会談では停戦には至らなかった。ただし、トランプはエネルギーインフラへの攻撃停止を条件にロシアとの交渉を進める可能性がある。この状況下でロシアが戦線を拡大すれば、トランプが「ロシアは和平の意思がない」と判断し、二次制裁を厳格化するか、ウクライナへの軍事支援を強化する可能性がある。
4.ロシア国内の「強硬派」の影響
ロシア国内の強硬派は、さらなる軍事的圧力によってウクライナを降伏に追い込むべきだと主張する可能性がある。プーチン大統領は通常、慎重な姿勢を取るが、交渉を有利に進めるためには一定のリスクを冒すべきだと考えるかもしれない。
5.欧州の対応と戦略的考慮
ロシアが戦線を拡大すれば、トランプがウクライナ支援を縮小しても、欧州が独自に軍事支援を継続する可能性がある。その場合、ロシアにとって停戦はウクライナの再武装を許すだけの結果となり得る。したがって、ロシアにとって現実的な選択肢は、スームィ、ドニプロペトロウシク、ハルキウの各州への進軍を通じてウクライナの軍事力を継続的に削ぐことである。
6.「トランス・ドニエプル非武装地帯」の構想
ドニエプル川の東側と、ロシアが領有を主張する地域の北側に「非武装地帯」を設ける構想についても触れられている。これは、ロシアの安全保障上の利益を確保するための一つの手段として議論されている。
7.慎重な軍事行動の可能性
プーチン大統領が全面的な拡大を避ける場合でも、局所的な軍事行動は続けられる可能性がある。例えば、ウクライナ軍をスームィ、ドニプロペトロウシク、ハルキウの各州に追いやり、次の防衛拠点へ退却させることで、ロシア軍の優位性を維持する戦術が考えられる。この戦略はロシアの地上戦力の優位を示し、トランプ政権に対し、ウクライナに譲歩を迫るよう圧力をかける狙いがある。
8.ロシアの意図の事前通告と管理可能なエスカレーション
ロシアは戦線拡大を行う場合でも、その意図を米国に事前に伝えることで、過度なエスカレーションを避けようとする可能性がある。プーチン大統領が慎重な戦略家であることを考慮すると、無制限な拡大ではなく、交渉と並行した軍事圧力の強化を選択する可能性が高い。
総じて、ロシアがスームィ、ドニプロペトロウシク、ハルキウへの進軍を決断するかどうかは、戦局の推移、米国の対応、欧州の動向による影響を考慮した上での判断となる。プーチン大統領の慎重な姿勢を踏まえれば、全面的な侵攻よりも限定的な軍事行動を維持する可能性が高いが、戦況の変化次第では拡大の可能性も否定できない。