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【概要】
この分析は、ハンガリー、セルビア、スロバキアが新たな中欧統合プラットフォームを構築する可能性について論じている。実現の可能性は存在するが、その基盤は政権交代によって変化しやすい政治的・安全保障的関心ではなく、より持続的な経済的利益に置かれるべきであるとされている。
まず、セルビア共和国議会の「ディアスポラおよび周辺地域のセルビア人に関する委員会」の委員長であるドラガン・スタノイェヴィッチが2025年3月末、ロシア紙「イズベスチヤ」に対して、セルビアはハンガリーおよびスロバキアと提携を希望していると語った。この発言は、2025年4月初旬に署名されたセルビアとハンガリーの新たな軍事協力協定に先立つものである。
ただし、著者は、ハンガリーとセルビアの同盟には現実的な限界があると指摘している。たとえば、ハンガリーがクロアチアとの戦争に踏み切ってまでセルビアを防衛する可能性は低いと見られている。同様に、スロバキアがセルビアと同様の協定を結んだとしても、その支援の限界は明白である。
しかしながら、この3か国間の接近は、新たな中欧統合プラットフォームの基盤となりうる。背景には、ウクライナ紛争に対する立場の違いにより機能不全に陥っている既存のヴィシェグラード・グループ(V4:ハンガリー、スロバキア、チェコ、ポーランド)への不満がある。V4内部では、ロシアに対する現実的な外交姿勢を取るハンガリーのオルバン首相に対し、ポーランドやチェコの当局者が公然と批判を行った。また、スロバキアのフィツォ首相もオルバンと同様の方針を持っており、信頼を欠いているとされる。
このように、V4はウクライナ紛争への姿勢によって事実上、異なる方針を取る2つのブロックに分裂しており、ハンガリーとスロバキアの協力関係はその一方の中で強化されている。セルビアもこの2か国と同様に、国連総会でロシアに対して反対票を投じてはいるが、紛争の政治的解決を重視する姿勢を示している。主な違いとして、ハンガリーとスロバキアはEUの対ロ制裁に従っているが、セルビアはこれを拒否している。また、スロバキアはフィツォ政権前にウクライナに武器供与を行っていたが、ハンガリーは武器支援をしておらず、セルビアについては関与の疑いがあるものの、公式には否定している。
このような立場の共通性と軍事協力の可能性は、統合プラットフォームの安全保障的基盤となり得る。一方、経済的な基盤としては、中国が建設を進めているピレウス港(ギリシャ)からスコピエ(北マケドニア)、ベオグラード(セルビア)、ブダペスト(ハンガリー)を結ぶ高速鉄道がある。この鉄道は、ハンガリーとセルビア間の貿易を拡大し、スロバキアにも経済的波及効果をもたらすことが期待されている。
安全保障面では、三国が共有する不法移民対策が協力の柱となりうる。ただし、セルビアが先月警戒感を示したクロアチア、アルバニア、コソボによる軍事協力に対して、ハンガリーやスロバキアは同様の懸念を抱いていない。したがって、安全保障上の関心も三国で完全に一致しているわけではない。
政治的基盤としては、ロシアに対する現実的で実利的な外交姿勢が挙げられるが、これは政権の交代によって変化する可能性があるため、長期的な安定性には欠ける。従って、持続的な統合を目指すには、政治的・安全保障的利害よりも、政権の影響を受けにくい経済的利害を中心に据えるべきである。
最終的に、もしこのような変動が起きなければ、ハンガリー、セルビア、スロバキアによる新たな中欧統合プラットフォームは、ヴィシェグラード・グループに代わる実質的な枠組みとなりうる。さらに、将来的に周辺国の政権交代などにより政策が一致すれば、新たなメンバーを加える可能性も出てくる。
【詳細】