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【概要】
アンドリュー・コリブコは、米国によるロシアとウクライナの仲介努力が限界に近づいていると論じている。特にトランプ大統領が、ウクライナに対してロシアの要求に応じるよう圧力をかけることができない、あるいはその意思がないため、難しい局面に直面しているとされている。
当初、米国がロシアとウクライナの和平交渉を主導することで大きな期待が寄せられたが、現在ではアメリカ側の交渉姿勢が厳しくなっていることからも分かるように、その期待は後退している。直近の展開としては、ウクライナと西側がロシアに対して無条件の停戦を要求する一方で、プーチン大統領はウクライナとの2国間協議の無条件再開を申し出た。
ゼレンスキー大統領はこれに応じ、プーチンが提案した日程と場所である木曜日にイスタンブールを訪問すると表明したが、プーチン本人が出席するかは不明である。プーチンが言及した2022年春の和平交渉は代表団レベルのものであり、両首脳の直接会談ではなかった。また、プーチンは現在ゼレンスキーを正統な指導者とみなしておらず、事前に大幅な譲歩がなければ会談に応じない可能性が高いとされる。
問題は、ゼレンスキーがプーチンの要求―すなわち、ウクライナの憲法上の中立性回復、非武装化、非ナチ化、係争地域の割譲―に一切応じる意思がない点にある。トランプもゼレンスキーにこれらを受け入れさせるつもりはない、あるいはできない。現時点で米国の仲介努力がもたらした成果は、戦略的パートナーシップ構想の話、特にエネルギーおよびレアアース分野における協力の可能性にとどまっている。ロシア側からは、これは対立の根本的解決ではなく、米国が経済的利益でロシアを取り込もうとしているだけに映っている。
米国は、ロシアおよびウクライナの双方に影響力を行使できる唯一の国家であり、両国に譲歩を促す「大取引(grand deal)」の仲介が可能な立場にある。他の仲介者候補―たとえば中国やトルコ―には同様の影響力はない。にもかかわらず、米国のアプローチは一貫性を欠いている。ロシアにはさらなる制裁やウクライナへの軍事支援拡大で圧力をかける一方、ウクライナには「支援放棄」の可能性を示唆する程度にとどまっている。だが、米国は新たなミサイル支援パッケージを承認しており、これは単なる脅しに過ぎない可能性もある。
米国がこのままロシアとウクライナ双方に対して均等な圧力をかける姿勢を取らないならば、第三者仲介は機能限界に達する。そうなれば、事態のエスカレーションは不可避となる恐れがある。具体的には、ロシアが新たな地域への地上戦拡大に踏み切る可能性、あるいはトランプが和平交渉の決裂をロシア側の責任とみなしてウクライナ支援を強化する可能性がある。
プーチンは現在、停戦に応じて他の要求を事実上棚上げする構えを見せていない。この姿勢のままでは、無条件停戦中に欧州諸国がウクライナに正規軍を派遣する可能性が高まり、それを懸念するトランプとの関係が悪化することになる。仮にトランプがこの状況において「エスカレーションによるディエスカレーション(Escalate to de-escalate)」戦略を採用すれば、米露間の熱戦が発生するリスクがある。一方、紛争から手を引けば、ロシアがウクライナを圧倒し、西側にとって地政学的な大敗北となる可能性もある。
したがって、トランプは、ウクライナにロシアの要求を飲ませることができないという状況の中で、重大なジレンマに直面しつつある。こうした状況では、米国が関与を断ち切るほうが望ましいが、エネルギー・鉱物分野での取引や兵器支援パッケージの存在は、むしろ関与強化の兆候と見られる。この道を進めば、トランプは自身が目指す「和平の仲介者」というイメージを損ねると同時に、対中戦略の柱である「アジアへの再転換(Pivot back to Asia)」も損なわれることになる。
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